短歌50首1日でつくるメモ

「起きられない朝のための短歌入門」で即詠の話があった。100首会という営みがあることをつねづね知っていて、参加したことはなく、短歌をたくさんつくる練習をしようとおもいました。


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  1. ゆきいろのチーズケーキがあらわれる わたしたちいまいきたえている
  2. メリークリスマスミスターローレンスわたしのしらない殺人事件
  3. よるやみのごぜんろくじのいつの日か廃墟でねおきするうつくしさ
  4. ゆきがふる おもちをたべる 粛々と火葬はおわりつづけていった
  5. 天国であえるとおもっているうちはあえるとおもっている天国で
  6. はねのない天使のような白磁気のひびきをかたいゆかにおろした
  7. いちまふあざらしにまふあざらし(とどかない)さんまふあざらしよんまふあざらし
  8. 沸騰の音がやむ 火はついている コーヒーポットが宙にうかべば
  9. インターネットのむこうで黙読のこえがよんでいる きこえてくるでしょう
  10. もしもすべてをやりなおすことができるならゆでたまごがなまたまごにもどる

    *2

  11. ゆらゆらとゆられていたらとりかえしのつかないまちでおろされました
  12. タクシーがこどもをのせてきえてゆくおおきな塾のあるゆきのよる
  13. せかいはちいさな運動会にすぎないとかんがえている絆創膏は
  14. 噴水のように天使はさみしいと噴水はいう ほんとうかしら
  15. さみしさの戦争兵器にあぶらさす あぶらはひとをうごかすちから
  16. ひっこしのあおい毛布にくるまれておおきなものがはこびだされた
  17. しろいおゆをすこしだけそらにちかづけてのみこんでゆく硝子のうつわ
  18. さゆさめている夜の朝 それぞれの恋人たちのいけないねむり
  19. ゆびこそが死をもたらすとしりながらゆびでみかんをはだかにむけり
  20. いなくなりたいとおもったことがあるわたしのともだちはみんな犬

    *3

  21. 電力を信じるの略? わたしたちが電信柱にかこまれている
  22. いろとりどりの洗濯物が輪をなしてあなたがめざめるのをまっている
  23. 針葉樹林のほそい肢体をおもいだし戦争は白いなみだをこぼす
  24. 鴨肉のしろいあぶらがとうめいにすきとおりゆく金属の板
  25. よこなぐりの 風には腕があることをうらやましいとおもう ゆきのひ

    *4

  26. おそろしいいきものたちはめをとじていちにちじゅうをもうふにねむる
  27. たとえばシャワーヘッドが水を生むというかんがえもある 神話をつくる
  28. せかいという暴力をとおざけながら断熱性のある二重窓
  29. いろいろなものにおかねをはらいつつ、Super Mario RPG
  30. (このあたりでうたはくるしくなってくる。水仙をのむひとのくるしさ)

    *5

  31. アパートはどこか遠くという意味のアパートとおもって暮らします
  32. ゆすらうめ 辰年うまれになりそうですこしどきどきするおんなのこ
  33. かまどうま うまれることはできないときづきはじめているおとこのこ
  34. 兵役を信じますか? とうすがみのアンケートにどうこたえただろう
  35. ヨッシーアイランドの中央にあるやまを富士山はときどきおもいだす

    *6

  36. トナカイがハンバーガーになることがいちねんのおわりになつかしい
  37. 爆弾をかんがえるときいつまでもわたしたちがうみだす黒い玉
  38. 本年はウパーの進化系であるヌオー・ドオーのミルクレアなど
  39. まひるまの体温計に体温をはかれば35.7℃ 平熱
  40. 鴨と葱いためつつ死はとつぜんにおとずれるもの 感謝している

    *7

  41. うつわからうつわにわたるおおいなるもりそばのいっしゅんの跳躍
  42. もりそばのもりは森だという説も(だれもしらない照葉樹林
  43. (このあたりからはやくおわれとおもっている。動物を傷つけない映画)
  44. こんにちは いつかはわたしたちがなる食肉のカーテン・コールだよ
  45. 雪道にのこしたはずのあしあとは風にながされていてみえない
  46. あたたかいお茶をふたりはしばきつつライブ・カメラのバード・フィーダー
  47. つぎこそはいい年になりますように とどかないねがいをくりかえす
  48. フリッパーズ・ギターを当時しらなくていまきいているインター・ネット
  49. ペンギンがこころをあふれだすように 自由をあきらめてはいけないよ
  50. 音楽の存在論 わたしたちはまだかんがえている メタ倫理学


感想

  • 前半20首くらいまではまあまあな感触で歌がつくれたけれど、のこりはほとんど惰性になってしまいました。(くるしくなってくる)(はやくおわれ)など、自己言及的な歌がおおくなってしまって、あまりよろしくない印象。
  • 「50首つくる」など数をさきにきめると数をこなすことが目的になってしまって、後半になるほど不自由になってしまったかんじでした。50首という枠がひとつ上のレベルの定型として作用して、ふたつの定型をかんがえながら歌をつくってしまったようなイメージ、というか。連作の呪縛? もっとたくさん100首とかをつくるばあい、また違うのかもしれない。
  • たくさん数をつくる場合たくさん捨てるのがベターだとおもうのですが、もはやインターネットは(WWWは)、歌をすてる場所としては機能しないので(火のように、ゴミ捨て場のようにわるいことばをかきすててすっきりする場所ではないので)、多作多捨は公開しながらやることではないとおもいました。
  • 「起きられない~短歌入門」にもおなじようなことが書かれていた?かもしれないけれど、順番に歌をつくっているだけなのに番号をつけてならべてしまうとだんだん連作になってきそうになってきてきもちがわるかったです。こういうアイデア出しのように歌をつくるばあい、カードに順不同に歌をかきちらして最後に数を数えるような書き方のほうが書きやすいとおもいました。
  • 「起き~入門」は12:00くらいに一巡目をよみおわりました。よい本でした。後半ほどおもしろかったです。おわり。

*1:AM7:00

*2:AM8:00

*3:AM11:00

*4:PM15:00

*5:PM18:00

*6:PM20:00

*7:PM22:00