# 歌003

自分がそれをよいとおもうものを自分のために用意すること。たとえば、食べること、飾ること、あたたまること。このように、ものを書くことができるだろうか。ひとをよろこばせるためでなく、ひとにほめられるためでもなく、部屋をととのえ、みずからを着飾り、歌をうたうように、たとえば日記をしるすこと。たとえば自由帳に書き散らすこと。
「書くこと」はすぐにだれかことなる人に意味を伝えようとする。そのような伝達を目的としない「書くこと」、「書くこと」をただたのしむことが、しばらくできていなかったと気づく。
インターネットは伝達のための空間である。この傾向はますます加速している。部屋をかざることも、花をめでることも、インターネットにおいては簡単に、承認欲求のための、伝達のための行為になってしまう。だから、そのような「書くこと」は、むずかしいのかもしれないけれど。

"カイエ"とは"ノートブック"のことという、冬の定義の辞書をひらけば