# 歌009

 目に見えないもの、触れることができないものに、〈彫刻〉という目に見える形、触れることのできる形を与えることが、僕の仕事です。
 精神が形を求める。形が精神に生み出される。精神と物体を融合させる。そして、心を形にする。抽象的な形は、見る者が自分の感情を投影できるという意味で、鏡のようなものなのです。不可視のものが宿った形は、別次元へと誘うきっかけとなると思うのです。
(『安田侃、魂の彫刻家』彩草じん子,2005,pp.15-16)


 モニュメントを建てるときに三つの条件があって、ひとつは建てる理由にふさわしいもの、二つ目はふさわしい環境、三つ目はそれを、ずーっと見守る人たちが住んでいるかどうかなんです。(中略)でも、あと何十年か何百年か経ってそこに眠る人のことを誰もしらない時代が来たときに、このモニュメントはどうなっているのかね。邪魔だからどかしちゃおうとなるのか、ずっと大切に守られ続けてゆくのか、どっちだろうね。 (同,pp.47-48)


にんげんのせかいはこわい手をおけばそこからとけてゆくゆきの像