デス・スター

 スペクトラルウィザード(最強の魔法をめぐる冒険)を読んでおもしろかった。
 ふつうの物語であれば「最強の魔法」は大量破壊兵器の比喩になってしまうのだけれども(たとえばデス・スターのように)、そうはならないと安心して読んでいた。作者に対する信頼といっていいとおもう。斉藤斎藤さんに「技術的信頼について」という文章があって、その内容は覚えていないので読み返したいのだけれども、作者にたいする技術的信頼をもって読むときとそうでないときで、作品をはじめて読むときの安心感は異なる。
 作品をはじめて読むときと、作品を繰り返して読むときの読者がいだく「感じ」はあきらかに異なっている。読者の所有する「経験」は、目の前のテキストの享受され方にあきらかに影響をあたえる。読書は時間のなかにおける行為である。しかしテキストの効果をテキストのみに還元して分析するようなやりかたでは、このような「経験」の側の効果をとりだすことができない。テキスト分析はテキストを固定した対象であると(暫定的に)みなす。そのような(ある意味で)科学的な態度によってのみあきらかになることは数しれない。だが、そのような態度によって救い出せないものもまた数しれない。
 短歌総合雑誌をいろいろと読むようにすることにした。できれば短歌に関係のないものをたくさん読むようにしたいとおもう。

スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険

スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険