げもり

 札幌駅と大通駅をつなぐ地下道にセイコーマート(北海道を中心に展開するローカルなコンビニエンスストア)があるのだけれども、その店頭を少し離れた位置に三角コーンがポールでつながれながら5個ほど並べられていて、すこし立入禁止のようだと思った。お腹がへこへこに空いていてなにかパンでも買おうとおもったのだった。コーンの間にはふぞろいな間隔に真っ青な安っぽいポリバケツが置かれていて、なかにはうす茶色い水がたまっているのが見えた。水面に滴がぽつりと落ちた。天井の裂け目から雨漏りをしているらしかった。

 雨水が漏れることをわたしたちは雨漏りと呼ぶけれど、しかし外は真冬の北海道であり、降っているのは雪なのだ。だから漏れているのは雨水ではなく、地熱による雪解け水なのだろう。だとしたらそこで起きていたのは雨漏りではなく「雪解け漏り」なのだ、とわたしはおもった。「雪解けもり」はごてごてしていて、晩冬ガールの髪型っぽいなとすこしおもった。しかし、雪解け水とはたして断言できるだろうか。そうとはは限らなくて、たとえばどこかの配管から下水が漏れていたのだとしたら、バケツに溜まっていたのは「下漏り」だった。げもりは嫌だなとわたしは思った。

 よいパンがなかったので、その日は腹ぺこのままセイコーマートを出た。おおむねそんな冬である。